"King Of Delta Blues Singers" by Robert Johnson

King Of Delta Blues Singers
Label:COLUMBIA CL1654
01. Cross Road Blues
02. Terraplane Blues
03. Come On In My Kitchen
04. Walkin' Blues
05. Last Fair Deal Gone Down
06. 32-20 Blues
07. Kind Hearted Woman Blues
08. If I Had Possession Over Judgment Day
09. Preachin' Blues
10. When You Got A Good Friend
11. Ramblin' On My Mind
12. Stones In My Passway
13. Traveling Riverside Blues
14. Milkcow's Calf Blues
15. Me And The Devil Blues
16. Hell Hound On My Trail

いまの世の中では「平凡な」と一蹴されそうな話だが、西暦2000年の私的な
出来事として一つの実話を書き留めておきたいと思う。

紀元2000年の夏のある日、突然どうしてもブルースを聴きたくなった。

それも、ロバート・クレイシル・ジョンソンなんかのモダンなやつではなくて、
ジョン・リー・フッカーとかライトニン・ホプキンスなんかのカントリー・ブルースってやつ
をである。で、久しぶりにロバート・ジョンソンを引っぱり出して聴いていた。

これを聴くときは結構、心のテンションを上げないといけない。
ロバート・ジョンソン自体、ギター一本で弾き語りをしているだけなのだが、
その音数が異様に多く、一人で弾いているとは思えない驚愕演奏と、
魂の叫びが絞り出されるようなハイ・ロンサムな歌声は、尋常ではない。
しかもよく聴いていたのは学生時代だし、そのころ巷ではロバート・ジョンソン
1枚の写真も残っていないという話だったし、クロスロードで悪魔に魂を売ったとか、
伝説度合いの非常に高いミュージシャンだった。
ジャケットを見ながら、数多の想像を膨らませて聴かざるを得ないから、
純文学を読むってな感じも持っていた。
小生が持っているソフトはLPだ。
その頃は、“King Of Delta Blues Singers”Vol.1、2が出ていただけだった。
まあそんなこんなで、暫く遠ざかっていたのも、我ながらしゃーないかなとも思う。
そんなLPを何故か急に聴きたくなって引っぱり出した。

ある知人と、大音量で聴くならどの音楽が一番良いか?って話になったとき、
「深夜、ヘッドホンでロバート・ジョンソンを爆音で聴いたら最高や!」って言っていた。
その知人はブルースバンドのドラマーだった。なのに、今夏のそのときは普通に聴いて、
妙に心に染み渡る感じがした。
しかも不思議なことにこの1枚を一回聴いただけで不思議と満足してしまい、
「どうしてもカントリー・ブルースを聴きたい」熱が冷めた。

因みに、最近のお気に入りブルースのアルバムは、
Olu Dara “In The World From Natchez To New York”(1998年)と
The Robert Cray Band “Bad Influence”(1984年)である。
かつてブルースバンドに参加していたこともあり、いつかファンキーなブルースナンバーに
バンジョーを加えてクオリティーの高いバンドもやってみたいと常々思っているから、
最近よく聴くブルースは、これらのモダンなバンド形式のものが多い。
そのときにはその知人をドラマーとして迎えて、たとえ一夜限りのセッションでもいいから…
と思っていた。
実際、かつてブルースを全く知らない青二才だった頃、ブルースを教えてくれた知人の中で、
彼がもっとも熱心に教えてくれた。
小生が、ブルースに限らず、様々な音楽に興味を示し出す第一歩だったといっても過言ではないと
今でも思っている。

この出来事から2週間後、ちょうどその出来事の頃に遠い地でその知人が自殺した、という
電話が入った。

紀元2000年12月31日

紅翼


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