“Live at College Station Pennsylvania”1994
by John Hartford

Live at College Station Pennsylvania
Lebel:SD-594CD
1. Gum Tree Canoe
2. Gentle On My Mind
3. In Tall Buildings
4. Wrong Road Again
5. Bring Your Clothes Back Home
6. Run Little Rabbit
7. Lorena
8. The Girl I Left Behind Me
9. Learning To Smile
10. Cacklin' Hen
11. I Would Not Be Here
12. Boogie
13. Old Time River Men
14. Piece Of My Heart
15. Natchez Whistle
16. The Julia Belle Swain
17. Skippin' In The Mississippi Dew
personnel:
John Hartford: Banjo, Fiddle, Guitar, Shoes and Vocals

小生の大好きな、尊敬するミュージシャンがまた一人他界した。

とも様キングスのリーダーから、追悼文として当HPの「CDこの一枚」のコーナーに
寄稿してはどうかという提案を受け、一にも二にもなく引き受けた。久しぶりの起稿である。

ジョン・ハートフォードはアルバムデビューが比較的遅い割に、たくさんのアルバムを残した。
オフィシャルなものでソロ名義のものは、30枚は下らないのではないだろうか?
また、デビュー作や1960年代のレコード群は手に入りにくいものばかりである。
お知りになりたい方は、ジョン・ハートフォードのオフィシャルHPもあるので検索してみては如何かと思う。
従って、別にレコードコレクターではない小生は、全ての作品に「耳」を通してはいないから
偉そうなことは言えないので悪しからず。

というわけで、今回の起稿にあたり、どのアルバムを取り上げるべきか大分悩んだ結果、
上記のアルバムに決めたのだが、最初に申しておくと、小生がもっとも好きなアルバムは、
実は本アルバムでない。
”Aereo Plain”(WS-1916/1971)がもっとも好きな、そしてよく聞いたアルバムである。
”Morning Bugle”(WS-2651/1972)が、それに並ぶ最高傑作だと思う。
また、”Mark Twang”(FF-020/1976)は、グラミー賞も受賞したアルバムだから
当然代表作として取り上げられるだろう。だから、小生が拙い原稿を書く必要もない。

小生は、あまりライブやコンサートに足を運ばない。
が、今日までに見た、日本人以外の最後のプロミュージシャンが(確か1995年だったと思うが・・・)
ハートフォードのソロライブである。その直後に購入したCDがこのアルバムだった。
従って、小生の記憶にある実物のハートフォードと本アルバムはリンクする。
小生が見たライブでは、ハートフォードは足を故障しており、タップダンスをしながらの
楽器演奏と歌は見られなかったが、非常に楽しめたライブだった。客も大入りだったと思う。

というわけで小生にとっては、ハートフォードの追悼としてこのアルバムがふさわしいと思い、
一筆取らせて頂いた。

本アルバムは、ハートフォードの往年の名曲が勢揃いしている。
全曲、全くのソロプレイであるので、ハートフォードの魅力は、十分堪能できる。
バンジョープレイは一級品だし、一曲一曲のメロディーも抜群である。
客とのコンタクトを取りながらのパフォーマンスも健在。
ただ、上記の1970年代の異様なテンションの高さやカリスマ的な気色悪さは陰を潜めている。
年もとっているしね。

小生が、ハートフォードを知ったときは、トム・ウェイツ(作曲兼歌手)や、ポーグス(アイリッシュ風パンクバンド)や
ヌスラット・ファテ・アリ・ハーン(パキスタンの歌手)やフェラ・クティ(ナイジェリアのミュージシャン)を
最初に聞いたときのように、拒否反応が先行した。
しかし、それらの全てのミュージシャン達がそうであったように、今は小生の血肉になっていると云っても過言ではない。
まあ最初に聞いたのが”Aereo Plain”(WS-1916/1971)だったのだから、今から思えば当然かもしれないが・・・。

だから小生は、当時はデイヴィッド・グリスマン(マンドリンプレイヤー)とジェリー・ガルシア(ロックギタリスト兼歌手)と
ジョン・ハートフォードとサンタクロース(毎年12月24日の深夜だけ働く配達人)の区別が付かなかった。

ところで、本を買うときに背表紙の良し悪しで中身の良し悪しも分かる、という嘘のような話を聞くことがあるが、
ハートフォードの作品については、それもいえる。
”Aereo Plain”(WS-1916/1971)、”Morning Bugle”(WS-2651/1972)、”Mark Twang”(FF-020/1976)は、
ジャケットも素晴らしい。

ハートフォードをどんなミュージシャンか答えるのは難しいが、小生が考えるのは、
彼は素晴らしい作曲家であったということである。
様々な楽器やパフォーマンスを伴いながら(しかも一級の腕前で)、
アイデア満載のアルバム群を制作してき、それが大変に評価もされてきているが、
語弊を承知で云うならば、彼は「単なる一級の吟遊プレイヤー」であったと思う。

かつて、下手な、しかし不滅の記憶に残るアマチュアバンドを小生がやっていたときに、
「存在」というパートを担当する奴がいた。そいつと比較するのはおこがましいけれど、
ハートフォードはそんな、地上に降り立っていた天使のようなミュージシャンであったと思う。

因みに、参考にならないかもしれないが、ジョン・コルトレーン(ジャズサックスプレイヤー)や
シェーン・マッゴーワン(バンド:ポーグスのヴォーカリスト)やリチャード・トンプソン(ロックギタリスト)も
こんな天使のようなミュージシャンの一人ではないかと思う。

脱線ついでに、悪魔のようなミュージシャンって、誰やろか? 
グレン・グールド(クラシックピアニスト)とかがそんな感じかな?

さらに脱線させてもらうと、ヌスラット・ファテ・アリ・ハーン(パキスタンの歌手)や
フェラ・クティ(ナイジェリアのミュージシャン)っていうのは、神のようなミュージシャンだと思う。

以上、勝手な感想だけど・・・。(こんな感想は、ころころ変わるものなので、深く受けとめんといてなっ!)

最後になったけれども、小生が高校生の頃から聞いていたジョン・ハートフォード氏の冥福を祈る。

2001.6.17 text by 紅翼


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