”GUM TREE CANOE”1984
by John Hartford

GUM TREE CANOE
[side one] [side two]
@I'm Still Here (Hartford) @Little Piece Of My Heart (B.Burns/J.Ragavoy)
AWay Down The River Road (Hartford) ATake Me Back To My Mississippi River Home (Fiddlin' John Carson)
BGum Tree Canoe (S.S.Steele) BLorena (H.D.L.Webster/J.P.Webster)
CYour Long Journey (Doc & Rosa Lee Watson) CWrong Road Again (A.Reynolds)
DJig Harris (Hartford) DNo Expectation (Jaggar/Richards)
=musicians=
John Hartford;vocal,banjo
Jack Clement;guitar,Dobro,ukulele Mark O'Connor;guitar,mandolin
Mark Howard;guitar Roy Huskey Jr.;bass  Kenny Malone;percussions
Sam Bush;mandolin Marty Stuart;mandolin
Jeannie Seely, Tommy Hannum, Rich Schulman;vocals
Jerry Douglas;Dobro Billy Lee Riley;French harp

ワタシもかつては、ブルーグラスという音楽のファンでして、
それなりに熱心に聴いたのですが、他の音楽も面白くなり始めまして、
いつしかほとんど聴かなくなりました。
でも、好きなブルーグラス系のミュージシャンはその後も気になり続けて、
機会があればCD(または中古LP)を買っておりました。
例えば、サム・ブッシュ、ピーター・ローワン、トニー・トリシュカ、
そしてこのジョン・ハートフォード。

先日、6月4日、そのハートフォードさんが亡くなりました。64歳。
癌がひどくなったようです。
もう20年以上も闘病してはったそうです。知らんかった。
1995年6月の大阪公演でも、ずいぶん歳を取ったんやなあ、と思ったんですが、
病気やったんや・・・。

彼は、正確に言うとブルーグラス・ミュージシャンではなく、
シンガー・ソングライターなんです。
ワタシが、ジョン・ハートフォードさんのどこが好きかって言うと、
その絶妙な「線切れ具合」です。
60年代のRCA時代は、ゴージャスな「ポップソング的」アレンジには不似合いな、
ピリピリしたバンジョーを乱暴に弾き倒すし、
70年代のワーナー〜フライング・フィッシュ時代には、
エキセントリックとも言える、様々な「問題作群」を発表し続け、
80年代には、一見穏やかな「好々爺」風な作品の中に、
人を小バカにしたような毒気を見せます。
で、どの時代にも共通するのは、聴き手に挑むような殺気。
でも、やはり、晩年になると、その殺気もどんどん無くなっていったようです。
病気の進行と、合っていたのでしょうか。

一作ごとに作風が変わり(特に70年代)、
その出来にもバラつきがあるのも確かですが、似たような作品がほとんど無い。
いろんな表現方法を持ち、表現意欲を持ち、失敗を恐れず、
美しいメロディを紡ぐかと思えば聴き手を突き放し、
本気とも冗談ともパロディともつかないような演奏。
それでいて、何やら上品で、いつも余裕がある。
バンジョー奏者としても個性的で味わい深く(ローバンジョー、最高!)、
シンガーとしても唯一無二のバリトン・ヴォイス(DJもやってたらしい)で、
ヴォーカリゼイションも魅力的です。
メロディーメイカーとしても超一流。
グラミーも2度(やったと思う)取ってます。
「天才」の風格のあるミュージシャンだったと思います。

そんなハートフォードさんのアルバムを、1枚選ぶのは不可能なんですが、
ワタシはこの "GUM TREE CANOE" を選んでおきます。
狂暴にナイフを振り回すような70年代を終え、
ニコニコ笑って人を刺すようなアルバム。
穏やかです。でも、コワイ。
また、ハートフォード音楽のもう一つのテーマである、
ミシシッピー川の情景が絶えず思い起こされる仕掛けもあります。
懐の深い、聴き所の多いアルバムです。
でも、この頃、もう病気やったんですね。知らんかったなあ・・・。
このアルバム、今ではカセットテープでしか手に入らないようです。
ワタシもLPレコードで持ってます。CD、出たらええのになー。

ホント、リアルタイムで好きだったミュージシャンが亡くなると、
辛いし、悲しいよねー。得も言われん喪失感。もう、何人目かなあ。
自分も、そんだけ歳取ったわけですよね。
ジョン・ハートフォードさん、アルバム11枚持ってます。
好きな曲、いっぱいあります。
似顔絵入りのTシャツも持ってます。
素敵な音楽を、ホントに、どうも有り難うございました。
安らかに眠ってくださいね。

2001.6.17 text by 佐藤


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