“Hirth From Earth”
by Hirth Martinez
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秋の夜長に1枚・・・
オリジナルは1975年発表。
ロビー・ロバートソン(元ザ・バンド)がプロデュース。本人がギターでも参加。
ガース・ハドソン(元ザ・バンド)、チャック・レイニー(アリサ・フランクリン、ダニー・ハサウェイ、ジャクソン・ブラウン等のたくさんのソウル、ポップスのアーティストのバックを努めるごきげんなベーシスト)辺りが、僕の心の琴線に触れる。
2年ほど前に突然約20年ぶりに最新アルバムを発表したので、知っている人も多いかも。
しっとりとポップに軽やかに曲は進んでいき、ハース・マルティネスの淡泊なだみ声で、妄想を淡々と唄い重ねていく。
バックミュージシャン達は強者揃いでありながら、出しゃばるでもなく、手堅く、そして自己主張しながらハースをサポートしている。
フォークでもなく、AOR風なのだが、バックミュージシャンが意外とダンスナブルなせいか、或いはその声のせいか、自己主張と笑いと、とぼけた感じが「ない交ぜ」になっている。
LP発売時には、日本での紹介がなかったようで、長く「幻の名盤」とされてきたとのことだが、いわゆるCD再発の波の中で光が当たったようである。
かく言う僕も1992年発売のCDで手元にあるわけだが、名盤だかなんだか知らないが、良いものを手に入れたという感覚には違いない。
風体はドクタージョンのようだし、声も似てると言えば似ているし、中途半端なロック感覚が、さほど売れなかった訳では無かろうか?
ところが今ではCDで簡単に手に入る。
しかしこんなアルバムは秋の夜長にぴったり。
仕事を早めに切り上げて、いつもの飲み屋にも行くのを控えて、ポケットに残った少々のお金でこのアルバムを買って帰って、自宅自室のステレオに円盤を乗せればどこか異次元の入り口くらいには行けるかも!
甘い声のラブソングも良いけれど、恋は十人十色。
彼の声に乗ってくる恋の物語が、強者ミュージシャンに支えられて流れてくると涙と言うよりも、苦笑してしまうかも。
こんな恋の仕方や忘れ方も良いんじゃない?
やっぱり秋の夜長の為に、こんなアルバムをステレオの横に置いておいてはいかが?
2002.9.2 text by 紅翼