“Irish Heartbeat”
by Van Morrison

Irish Heartbeat
1.Star Of The County Down Traditional 2:41
2.Irish Heartbeat Morrison 3:52
3.Ta Mo Chleamhnas Deanta Traditional 3:31
4.Raglan Road Traditional 4:43
5.She Moved Through The Fair
6.I'll Tell Me Ma Traditional 2:29
7.Carrickfergus Traditional 4:23
8.Celtic Ray Morrison 3:47
9.My Lagan Love Traditional 5:19
10.Marie's Wedding Traditional 3:17

秋の夜長に・・・ハース・マルティネスに続き第2弾
おっさんパワー炸裂・・・アーネスト・ラングリンに続いて第2弾

良いアルバムってのは、「時代」や「地域」の要素を超越していると思う。

ヴァン・モリソンは、”ゼム”というR&Bバンドを皮切りに、ソロ活動も長く、
アイルランド出身ながら、アフリカ系アメリカ人の影響を多大に受けながら、
多くのアルバムとコンサート活動を続けてきた今や超大御所シンガー(&ライター)である。
得てして一本調子になりがちな大声系シンガーなので、好き嫌いは分かれるかもしれないが、
恐らくとも様キングスのHPへのアクセスされる方々は、アコースティック楽器好き人が多かろうと思うので、
当アルバムを拾い上げた。

僕が最初にこのアルバムを聴いたのは、多分アルバム発表後しばらくした’90年頃だと思う。
このころは、僕自身、音楽の指向性が大幅に拡大しつつある時期で、この時には、
ヴァン・モリソンのバックで演奏しているチーフタンズのことを知らなかった。
というよりアイリッシュなるものをよく分かっていなかったと思う。
そんな中でアイリッシュに惹かれていくきっかけになったという意味でも僕にとってこのアルバムは重要なアルバムである。

よく「自分の演奏が、そのジャンルを聞いて下さるきっかけになって欲しい。」というミュージシャンの発言に遭遇するが、
そういっている人たちに限って、異文化を許容しようとしていないような気がすることが多い(本人達は真剣だと思うよ)。
ところが、考えれば当然のようだが、ヴァン・モリソンとアイリッシュのコラボレーションは、
「ありそうで、無い」共演であり、それまでのヴァン・モリソンが、明らかにR&Bやジャズ、ブルースに
影響を受けてきたであろう名曲の数々を見渡しても、「えっ、そうなの?」というようなアイリッシュトラッド的アルバムは、
僕のような狭窄視野リスナーにとっては、目から鱗が落ちたのだ。
こういうきっかけが、大事だし、これからも大事にしたいと思う。

チーフタンズは、アイルランドの国民的バンドであり、多くのオリジナルアルバムを発表し、
映画音楽もたくさん製作している。
このチーフタンズの演奏する、ウーリアン・パイプ(バグパイプに似た音だが、もう少し艶っぽい音が聞ける。)、
ティン・ウィッスル(ブリキ製小型縦笛)、バイオリン、ハープ、フルート、ボドラン(タンバリンを大きくしたような太鼓)等々の
音色に乗って、ヴァン・モリソンが優雅に朗々と歌い上げるアルバムだ。
トラッドを中心にヴァン自身のオリジナル2曲が収録。
収録時間39分程の、おっさんアルバムとしては手頃な長さなのだ。
ヴァン・モリソンが主役のアルバムなので、ダンスチューンは少ないが、秋の夜長にはぴったり。

メアリー・ブラックやモーラ・オコンネル(いずれもアイリッシュを代表するといっても過言でない女性シンガー)も
ゲストヴォーカルとして参加している。

アイリッシュ好きの人でもアイリッシュトラッドばっかり聞いて食傷気味の時には、ヴァン・モリソン風味抜群なので、
「箸休め」に如何でしょうか?

2002.9.16 text by 紅翼


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