“Tristano”
by Lennie Tristano
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Performers
Peter Ind : Bass
Lee Konitz : Sax (Alto)
Jeff Morton : Drums
Gene Ramey : Bass
Art Taylor : Drums
Lennie Tristano : Piano
最初に聞いたときに衝撃を受けたピアニスト第1弾。
僕がバンジョー弾きだからだろうか?この無機的な音弾の速射砲に参ってしまった。
一曲毎に、マシンガン片手の曲とバーボン片手の曲が交互に進行していく。
レニー・トリスターノは、ピアニスト。いわゆるジャズのアルバムである。
サックスのリー・コニッツも有名なので知っている人も多いかも。
ジャズの世界では、トリスターノ学派というのがあるらしく(音楽的にはそんなことはどうでもいいと思うのだが、)、
若干年下のリー・コニッツは、トリスターノの弟子にあたるらしい。
全体的には、クールなピアノジャズだが、無機的過ぎるが故に音だけを聞かせるという意図が直接に聴者に伝わってくる。
本作は、1955年、彼が36歳の時のアルバムである。ニューヨークでジャズ理論を探求した後に制作したアルバムであり、
トリスターノはアトランティックに本作ともう一作しかオフィシャルでは制作していないようである。
と書くと、本作を「奇跡的な1枚」と言いたいところだが、それほどのカリスマ性を放ちまくっているアルバムではない。
僕が単純にこのアルバムの1曲目と3曲目から受けた衝撃が忘れられなくって、時々CDプレイヤーに乗せるアルバムであるし、
後半の割と普通にクールで御機嫌な感じも捨てがたく、僕の好きなジャズアルバムの一つとして、取り上げた。
解説を読むと色々と、本アルバムは演奏以外の作為的要素がふんだんに盛り込まれている作りになっているという。
僕は、熱心なジャズ・リスナーじゃないから、細かいことに言及はしない。(というか、できない。)
このアルバムを聴くきっかけは、約10年前に遡るが、当時のバンドで「存在」パートを務めていた
僕の友人宅での爆音ステレオでだった。
この頃僕は、クール・ジャズと呼ばれる時代のマイルス・デイビスなんかに興味があった頃でもあり、
その流れで自然に衝撃を受けた覚えがある。
この時とほぼ同時期に同じ友人から聞かせてもらった「衝撃ピアニスト」にグレン・グールドがいる。
この人については、次回のレポートに!
トリスターノの、このアルバムで少し残念なのは、前半のクレイジーさが、後半には欠けてくることかな?
上記したように普通に御機嫌な演奏ではあるのだけれど、前半に比べるとちょっと物足りない。
その点、セシル・テイラーや山下洋輔は「アホ」度合いが高いけど、レニー・トリスターノは、
少々頭でっかちなところが露呈してしまう。
そこんところが、全体を通しての聞き易さでもあるので、1曲目と3曲目を一所懸命聞いて、
後は盛り上がった心を鎮めるために最後までCDを止めずに聞き流すのもいいだろうと思う。
7曲目と8曲目なんかリー・コニッツも全面にフューチャーされて、普通に聞き易いバップジャズである。
「ジャズのクレイジーさとポピュラーさを併せ持つ」というと褒めすぎ過ぎかな?
でも、僕が好きなジャズアルバムの一つには違いない。
2002.9.24 text by 紅翼