“Devout Catalyst”
by Ken Nordine

Devout Catalyst
1. I Love A Groove (3:16)
2. Mr. Slick (4:42)
3. Inside Of Is (6:23)
4. Aging Young Rebel (2:51)
5. Quatrains Of Thought (4:21)
6. Spread Eagle & The Final Page (9:08)
7. Thousand Bing Bangs (3:48)
8. Cracks In The Ceiling (4:04)
9. Ways Of The Meek (4:33)
10. Movie (8:04)
11. Zodiac Uprising (7:40)
12. Last Will (5:49)

performers
Ken Nordine - vocals
Tom Waits - guest vocals
Jerry Garcia - guitar, performer
David Grisman - mandolin, performer
Howard Levy - keyboards, harmonica
Jim Kerwin - acoustic bass
Joe Craven - percussion
Dan Healy - producer

ともキンHPコーナー”音楽とわたくし”で、
2000年7月5日付の僕の投稿記事”おっ!こんなところで・・・”
というのが掲載された。
今回紹介するCDもまさにそんなCD。
ここんところ僕の記事で、○○シリーズ第2弾っていうのが、続いているけど、
今回のも”おっ!こんなところで・・・”第2弾。

メインパフォーマーのケン・ノーディーンを知っている人は少ないだろうけど、参加ミュージシャンを見れば、
あれっ?と思う人が名を連ねているでしょう。
特にともキンHPにアクセスしてくるのは、ブルーグラスやアメリカンミュージックが好きな人が多かろうと思うので、
特にそう思うのでは?
でも、そういった人たちにはお薦めできるアルバムではありません。
「早い曲」は、一曲もありません。
ノーディーンの唄は、まるで朗読です。Word Jazzにメロディックな歌を期待してはいけません。

僕が大好きなミュージシャンに、トム・ウェイツがいる。
1番好きなミュージシャンと云っても良い。
これもまた、10年くらい前の話になるが、僕はウェイツの音楽を熱心に探索していた頃で、
ウェイツの自作アルバムは無論、彼は俳優として映画にも多く参加したり、サントラ盤を制作したり、
幅広く活動しているので、それを追いかけていた。当然、彼の伝記も読んだ。
ウェイツは、ビート詩人と呼ばれる、ウィリアム・バロウズ、ジャック・ケルアックらに影響を受け、
また毒舌コメディアンのレニー・ブルース(日本ではあまり紹介されていないが、ダスティン・ホフマン主演
「レニーブルース」(1974)という映画があるので、参考にされると良いでしょう。)を尊敬した。
音楽ではジョージ・ガーシュイン、フランク・シナトラ、セロニアス・モンク、レイ・チャールズ等の影響を受けながら、
これらの様々な文化からと自らの若い頃の体験の中から、そのスタイルを作り上げていったとされている。
そのウェイツを追いかけていく中で僕の手中に入ったのがこのアルバムである。
だからアプローチがそもそもブルーグラスからではないので、やはりアルバムの内容もアッケラカンとしたものとはほど遠い。

ケン・ノーディーンも’50〜’60年代から、ビート詩をジャズ風音楽に自身の低い声を乗せる形で、
淡々と朗読するように唱うWord Jazzと呼ばれるスタイルの音楽を作り上げ、途中ブランクがありながらも
10枚以上のアルバムを制作してきたようだ。
Word Jazzというと、どう喩えればいいか?ジャズ風のだらだらした音楽に乗せて朗読していると言えばいいか?
紀元前のラップみたいなものと言えばいいか?
黎明期のラップというくくりなら、ギル・スコット・ヘロンや、ザ・ラスト・ポエッツの方が「音楽的」だ。
だから「紀元前の」と喩えた方が良いような気がする。

米国の、’50〜’60年代のビート文化の影響を受けた音楽アーティストとして、
家族的ヒッピーロックバンド:グレイトフル・デッド率いるジェリー・ガルシアがいる。
ウェイツとは対極にあると云っても云いスタイルのミュージシャンだが、
ガルシアがノーディーンと結びつくことは考え難くないことということになる。
元々このアルバム“Devout Catalyst”もガルシアが発起人となり、ウェイツを誘ったようである。
従って、僕はウェイツつながりでこのアルバムを入手したが、ウェイツは2曲程度しか参加していない。

ガルシアの死後、最近、ガルシアとマンドリン奏者:デイヴィッド・グリスマンとのコラボレイト作品が
多数リリースされているので、今ではブルーグラス愛好家達もデッド愛好家達も違和感無く
ガルシア=グリスマンの共演作を受け入れられるだろう。
でも僕がこのアルバムを入手したときは、この取り合わせ自体非常に興味をそそられたものだった。
本アルバムは、グレイトフル・デッドレーベルから発売されている。

それと、最近気づいたのだが、キーボード兼ハーモニカで参加しているHoward Levyは、
ベラ・フレック&フレックトーンズの元メンバーだし、Jim Kerwin、Joe Cravenは、
最近のグリスマンのドーグ・アルバムのバックでは必ず参加しているメンバーだ。
だから、ノーディーンのWord JAZZをまったく、デッド&ドーグファミリーがサポートしていると言っても過言でない。

まさしく、”おっ!こんなところで・・・”が表出するアルバムだ。
でも、軽い気持ちで入手すると後悔するよ!

2002.9.29 text by 紅翼


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