2001年のベストアルバム

01.KHAM KHAM 02.音楽に満たされて 03.BAD NEWS IS COMING 04.With A Little Help From My Friends
05.Joe Cocker 06.GOTCHA! 07.RAHAT NUSRAT FATEH ALI KHAN 08.CZECHMATE
09.GUM TREE CANUE 10.PRIETOS

1.シェリフ・ムバウ“KHAM KHAM”
2.レッタ・ムブール“音楽に満たされて”
3.ルーサー・アリスン“BAD NEWS IS COMING”
4.ジョー・コッカー“With A Little Help From My Friends”
5.ジョー・コッカー“Joe Cocker”
6.アーネスト・ラングリン“GOTCHA!”
7.ラーハット・ファテ・アリー・ハーン“RAHAT NUSRAT FATEH ALI KHAN”
8.ドルーハ・トラヴァ“CZECHMATE”
9.ジョン・ハートフォード“GUM TREE CANUE”
10.オマール・ソーサ“PRIETOS”

基本的に去年(2001年)発売されたものもしくは去年購入したものの中から、
よく聴いたアルバムを列挙した。

ランキング順位は、他に根拠無く、とにかく繰り返しよく聴いた順。
だから、去年発表されたアルバムではないものもいくつか列挙されている。
斜体文字で記載したものが、2001年発表ではないもの。
太字文字で記載したものは、2001年にCD発売されたものだが、
過去にLPで発表されていたもので、いわゆる再発もの。
7★のように資料に目を通しながら当HPの読者の為に親切な原稿を書いている暇が無いので、
気は引けるのであるが、とにかくよく聴いたCDを書き留めておくので何かの参考にして下さい。

1〜3位までは「よく聴いた」度合いでは4位以下の作品を大きく引き離した。

21世紀最初の年。結構CDは買った。アフリカものがやはり多い。
ママドゥ・ジャバテ“トゥンガ”や、年末押し迫って買ったフェミ・クティ“ファイト・トゥ・ウィン”、
ネバ・ソロ“ケネ・バラフォン”は、及第。
フェミ・クティとトム・ウェイツ「パルプ・ノワールVOL1」は、暮れの押し迫ったときに購入したため、
実際に耳を通したのは、2002年に入ってから。
だから、発売と「よく聴いた」というランキングとは整合性を持たせられない。
確かに良いアルバム群だったので、ランキングするとしたら来年初頭の発表時になるか?

 重要な出来事としては、ジョン・ハートフォードが逝去したこと。
上記ランキング作品は、2001年CD再発されたもので、1984年の作品。
小生は、当アルバムは初めて聴いた。でも知った曲が殆どだったけど・・・。
2001年7月13日付ともキンHP“CDこの1枚”コーナー内のジョン・ハートフォード追悼寄稿での
7★投稿記事を参照のこと。

 オル・ダラ“NEIGHBORHOODS”、フィル・アップチャーチ“DARKNESS DARKNESS”(再発もの)も
上位ランキングのいいアルバムだった。

NHK“TR”と云う番組で知った大萩康司“CIELO”の中の曲“澄み切った空”は、
どのギタリストもスタジオ録音したことがないとのふれこみで買ったが、小生にとって、
グレン・グールド演奏の“ゴールドベルグ変奏曲”やカラヤン指揮の“英雄の生涯”、
バーンスタイン指揮の“火の鳥“の時ほどの衝撃は少なかった。
イェラン・セルシェル”J・S・バッハ無伴奏チェロ組曲“よりは普段に聴けるアルバムだった。
アタワルパ・ユパンキの方がかっこいいかも。

ロックでは、7★お薦めのストリング・チーズ・インシデントも向学のために購入。
同時に買ったスクゥィーリル・ナット・ジッパーズの方が面白かった。
でも一昨年のダン・ヒックスやチャック・イー・ワイズにはかなわない。

そういえば、年末に発売されたアリソン・クラウス&ユニオン・ステーションの新譜と
ベラ・フレックの新譜も買ってしまった。アリソンは、1997年の“SO LONG SO WRONG”の方が良い。
ベラの新作はよほどコアなベラのファンにだけ捧げるアルバム。
購買層は、ブルーグラッサーでは無いはず。
対象がクラシックファンかと云えば、何故バンジョーなの?と思うし、
最近のライ・クーダー化の一種と思う。ベラ・フレックの最高傑作は、“NATURAL BRIDGE”。

日本人及び日本近海ものはあまり買わなかった。特に気になるミュージシャンも無し。
ベストアルバムとは関係ないが、たまたまラジオで聴いた古内東子の“宝物”という曲の伴奏がかっこよかった。
と思って、自分でいきなりアルバムを買うのも勇気がいるので、会社の同僚に貸して貰えないかと思い、
CDを持っている奴はいないかと声を掛けた。
椎名林檎に初めて興味を引かれて、最初に聴いたときもそうした。
ところがそ奴は「女が聴くミュージシャンのCDなんか持っていない」との返答。
驚いた。そんな聴き方があるのかと。
詩(うた)に、演奏に、聴く側をカテゴライズしてしまうような力があるなんて考えたこともなかった。
というか、リスナーって云うのはずいぶんと従順なものなのだと空恐ろしくも感じた。
まあ、元々小生は音楽を聴くときにあまり歌詞内容が頭に入らないのではあるが、
女の聴くものだから聴かないなんてことはしたことがない。
確かに商品としてのパッケージされた音楽の売り先として、
客層を想定して制作、販路の拡大を目論むことは分からなくもないし、
作者の思いに単純に共感するという程度のニーズがあることも当然あるだろう。
しかし心理学を持ち出すまでもなく人間の心の中には色々な襞が重なり合っていて、
現れたり隠れたりするものだと思う。
色んな聴き方があるだろうし、売る側の都合(考え)に従属することもないだろうと思う。
「私」の中には女っぽい部分も男っぽい部分もあるのだろうから、
せめて音楽には自由があっていいのだろうと思う。
音楽を介して闘いが発することもあるだろうが、表現は自由であるべきである。
音楽に力はない。音楽は力の餌である。

年末の紅白歌合戦を観ていて、鳥羽一郎がかっこいいと思ってしまった。
小生も年を取ったかと、しんみりした年の瀬だった。

ランキング作品に移る。

1.は、2曲目の“DOOM ADAMA”のオマール・ソーサのピアノが絶妙な一曲。
パリ発信のミュージシャンで、ユッスー・ンドゥールに似た声だがもっと線が細く、
アコースティックギターがよく聞こえる作品。
しかしそれが意外とアーバンな感じを醸し出しており、小生は去年上半期ほんまによう聴いたアルバムである。

2.は、買うCDが無くて、いつものCD屋さんで何の気なしに手にしたアルバム。
チャック・レイニー、リー・リトナー、リチャード・ティー他の米国のミュージシャンが
サポートしていることに興味を引かれて買ったのが実のところ。
因みに、この買い方で、アール・クルー“FINGER PAINTINGS”は大成功した1枚。
果たして、このレッタ・ムブール“音楽に満たされて”も最高のアルバム。
女性シンガーとしては、エリス・レジーナ“IN LONDON”に匹敵する好盤だ。

3.ロックを感じるブルーズアルバム。
ジャケットといい内容といい、無茶苦茶格好良い!!と云うアルバム。
オリジナルアルバムに入っていた全7曲はチョー重たいスローブルーズが中心。
それはそれで大変に聴き応えがあり、ボーナストラックに入っている4曲もアップテンポな珠玉の曲々。
ところで、不思議なことに10曲目の“IT’S BEEN A LONG TIME”はスローブルーズとして始まるのだが、
何故か歌が終わったあとにリズムアレンジが施されている部分がフェラ・クティを彷彿させるアレンジなのだ。

4.と5.は1本のカセットテープの片面ずつに録音してるものを
ずいぶん前(1989年前後頃)から持っており、それを一度久しぶりに聴いたらやめられなくなり、
通勤の行き帰りには必ず聴くドライブ用ミュージックとなってしまったもの。
アルバート・リーやクラレンス・ホワイトやレオン・ラッセル等々ゲストミュージシャンも多数参加しており、
曲もビリー・プレストンやビートルズやザ・バンドのナンバー他みんながどこかで聴いた曲もたくさん収録されて、
その上でジョー・コッカー節炸裂!!口角から涎、のどからゲロがほとばしる名作。脱糞もの。

6.タイマーをセットして、目覚まし替わりにすると最高の一枚。
夏から秋にかけてよく聴いた。
このアルバムで2曲カバーされているジャッキー・ミットゥーについて、一言。
去年出張で出た北陸の某F県で、宿泊ホテルの近くでガンガンにレゲエをならしている店に入った。
外の騒音状態とは打って変わって、店内は割と静かで、レジにはちゃきっとした小柄なおねえちゃんが一人。
こじんまりした店だった。
小生一人だったので、いつものようにCDの棚を舐めるように見ているとまるでマヌカンのように
(古い言い方かな?)声をかけてきた。
「何をお探しですか?」
レコードショップやCD屋でこの手の声の掛けられ方をする事は滅多にない。
どちらかというと死んだ魚のような目をした仕事帰りのビジネスマンやオフィスレディーや
目の血走った宅っぽい奴が多く、終始無言のことが多い。
しゃべっている奴と云ったら、音楽に目覚めたばかりと云った男子中学生や
いつの時代も「今時の」女子高校生と云ったところだろうか。
客の方から店員に向かって質問なりしたって、客を小馬鹿にしたような反応か、
もしくはバカ丁寧な反応が返ってくる方が多い。パソコンショップはもっとひどいけどね。
で、思わずレゲエを比較的たくさん置いている店だったので、とっさに小生の口から出たのが、
「アーネスト・ラングリンのアルバムを探しているのだが。」
これはあながち嘘ではなく、当HPの去年のベストCDランキングにも書いているように、
アーネスト・ラングリンはこつこつ聴いていきたいと思っているミュージシャンには違いなかった。
でも出張中のことでもあり、それほどCDの購買欲に駆られていたわけでも無かったから、
そのときはどうでも良い発言といっても過言ではなかった。
しかしあとで分かったのだが、彼女は店長であったにも関わらず、アーネスト・ラングリンを知らなかった。
「他にどんなのがお好きですか?」と更に訊いてくるので、
(この時点で、こいつがうっとうしいとは思わなかった。なぜなら結構可愛らしい感じの娘だったから。)
で、「オルガンものがいいかな?ジャック・マグダフなんかええな〜」と応えた。
「それなら昨年発売されたジャッキー・ミットゥーの新譜はどうですか?」
小生は知らないミュージシャンだったので、素直に質問した。
「どんなやつかな?」
「お掛けしましょう。」といい、店の棚から輸入盤を1枚取ってきておもむろに試聴させてくれた。
「なかなか古い感じの録音やけど、昨年のアルバムと云うからには、そういうテイストのミュージシャンなの?」
「・・・」と彼女。
で、ジャッキー・ミットゥーの情報は殆ど得られないまま、その試聴CDは悪くなかったし、
昨年(2000年)のアルバムにしては、変わった録音手法を取っているなあ、
と云う変な関心を持って次の日帰宅後、じっくり聴きながらライナーに目を通した。
ジャッキー・ミットゥーってとっくに死んでるやん!

7.同時発売で、ヌスラット・ファテ・アリー・ハーンの2枚組CDも出た。
勿論これも最高のアルバム。しかし、買った当初よく聴いたのは、ラーハットの方。
これまででもトータルでよく聴いたのはラーハットだと思う。
人数が少ないような気がするし、声も細いようなのだが、何かしら生々しさを感じてしまったアルバムである。
 カッワーリーものは、他にRIZWAN MUAZZAM QAWWALI“A BETTER DESTINY”も聴いた。
ともキンHP“CDこの一枚”7★の投稿記事参照されたし。
 ところで、7.については、2001年9月11日の事件と
それをきっかけに大々的に始まった戦争について避けることができない。
世界が思考停止になっている状況で経済とプライドが優先しているのが戦争状態。
この状態の時に何かしらの疑問を提示することがもっとも人間としてやるべきこと。
音楽にできることだとかは、たかがしれている。しかし音楽をツールにするしかない者たちは、
それを使って表現するしかない。
要は、手に着けた職で生きていく我々の手段と同じであるというだけのこと。

8.チェコスロヴァキアのブルーグラスバンド。
近年の中で唯一と言っていいほど、「欲しかった」ブルーグラスバンドのCDだった。
手に入りやすいCDとしてピーター・ローワンとの共演作品がある。
ブルーグラスと云うよりはいわゆるニューグラス。

9.大好きなブルーグラス、アメリカンミュージックプレイヤーの代表作の一つ。
語るべきことが多過ぎるミュージシャンほど、コメントは淡泊になってしまう。

10.シェリフ・ムバウにクレジットされていて知ったミュージシャン。
このアルバムと“BEMBOM”と云うアルバムを立て続けに購入した。
閉塞感のあるジャズという世界からは異端扱いされているのでは?(小生の独断だが・・・)
というほど自由奔放なアルバム。
ああそういえば、グレアム・ヘインズ“THE GRIOTS FOOTSTEPS”もタイトルからも察せられるように、
アフリカを意識したアルバムだった。
そう考えると、今のミュージシャン達は求める先としてアフリカの方を向いているのかな?
よく考えたら、ダラー・ブランドはその名も“AFRICAN PIANO”と云う作品を残しているし、
ジョン・コルトレーンにも“AFRICA/BRASS”というアルバムがあり、そんなに珍しいことではないのかも。
小生のジャズ知識の浅さが露呈してしまった。
アーネスト・ラングリン“MODERN ANSWERS TO OLD PROBLEMS”が好きな方にならお薦めの一枚。

では、また来年。

2002年1月16日 text by 紅翼


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