「2005年のベスト・アルバム」

うわ〜〜〜、すっかり遅くなりました。
吉例、ベスト・アルバムを選んでみましょう!
2005年に発表されたもので、ワタシが買ったものから選びました。
今年は、次の5枚です。

(a)サリフ・ケイタ(マリ)“M'BEMBA”
(b)アリ・ファルカ・トゥーレ&トゥマニ・ジャバテ(マリ)“IN THE HEART OF THE MOON”
(c)アル・クーパー(米国)“BLACK COFFEE”(=ジャケ写真)
(d)RIKKI(奄美)“結(ゆい)ぬ島へ−リッキの奄美島唄−”
(e)里アンナ(奄美)“夢何処”

BLACK COFFEE

ワタシ、やはりアフリカものが好きですな〜。
(a)は、もう神の域に近づきつつあるサリフの、最高傑作の一つになるであろう作品。
近作の傾向そのままに、生楽器中心の演奏ですが、
アレンジの多彩さ、出てくる音のふくよかさや陰影、楽曲の充実、
どれをとっても、ため息が出るほどの美しさです。
一作ごとに研ぎ澄まされていっとります。
どこまで行くんでしょうか。
近年、生楽器中心のアフリカ・ポップが花盛りですが、
他のどのミュージシャンのものとも明らかに違います。
参りました。

(b)は、2006年3月に亡くなったアリ・ファルカの遺作になったもの。
ベテラン・コラ奏者との共作です。
穏やかで温かい、とても気持ちのいいアルバムです。
ニジェール川の流れのような、ゆったりとした音楽。
それもそのはず、このアルバムは、
ニジェール川のほとりに立つホテル・マンデで録音されたものなのです。
そのホテル・マンデ、ワタシらが昨年滞在したホテルなんですよ。
その時は、この偉大な音楽家の、歴史的な録音を知りませんでした・・・。 残念。
アリ・ファルカは、西アフリカ・スタイル・ギターの確立者で、
ギターをマリの民族楽器にしてしまったとも言えるでしょう。
当地マリではサリフよりも尊敬されている、いや、・・・尊敬されていた人です。
世界的な名声を得ながら、マリに留まり、マリの人のために演奏してきた人でした。
地元のニアフンケ市長も務めており、社会的な尊敬も集めていました。
現政権に批判的な勢力からは、次期大統領への期待もあったようです。
返す返す、アリ・ファルカの死が悔やまれます・・・。

その他のアフリカものでは、
バラフォン(伝統木琴)の第一人者・ケレティギ・ジャバテの“SANDIYA”が良かったな。
サリフや、マリの人気ギター奏者・歌手アビブ・コアテのバンドにいて、
ワタシも3度ほど演奏を見ことがあります。
もう、完全なおじいちゃんです。
左利きで、バラフォンの鍵盤も左右逆。
アビブのバンドでは、左利きバイオリンをヒャラヒャラと聴かせたりもます。
そんな彼の初リーダー作は、雄大な、スケールの大きなものとなりました。
様々なゲストと、ある時は1対1で、ある時は和気藹々と大勢で、
のんびりした、且つ濃密な演奏を聴かせます。
こればっかりですが、ニジェール川の流れのようですわ。
ある意味、サリフよりマリを感じさせる音楽です。
また、行きたいよな〜〜〜。マリへ。
ニジェール川が、懐かしい。

(c)は名前だけは知っていたが、
そんなに注目したことなかったような懐かし鍵盤奏者のソロ作。
これ、エエですよ〜〜〜。
ジャンルは、何か解りません。
ロック的でもあるし、ソウル・ファンク風でもあるし。どっちでもないし。
まあ、キャリアの長い演奏者が寄り集まって、
これまで自分たちが聴いてきたり演奏してきた音楽を、
普通に演奏してるだけなんでしょう。
それだけで、こんなに味わい深い音が出てくるんですな。
地味ですが、滋味深い。
まあ、ジャンルなんか、まったく無意味で、そんなもん超越した音楽ですわね。
年を取るのも、悪くないですね〜。
但し、若い女性にモテそうにはありませんが・・・。
マンドリンを持った中ジャケの通り、アルが弾くマンドリンも聴けます。
マンドリン好きにも、たまりません。

そんで、最後は5年連続選出の奄美もの。 完全にハマってますな。
(d)は、お馴染み、RIKKIの島唄&ポップス集。
RIKKIの歌唱は、恐らくキャリアでのピークを迎えたようです。
ビブラートを掛ける/掛けない、息を抜く/抜かない、声の強さや張り、などなど、
あらゆる歌唱技術がこれまでの作品を凌いでいます。
勿論、彼女自身の音楽体験や人生経験が反映されたものなんでしょうが。
演奏においても、アレンジを含めて島唄/ポップスの境目が全くありません。
両者を見事に調和させています。
奄美ポップの完成型が近づいているのかも。
欲を言えば、「これ!」という楽曲が欲しかったのと、
演奏が簡素に過ぎて、物足りなさを感じることかな。
いずれにせよ、RIKKIのマスターピースの一つになりました。

(e)は、同じく奄美出身の「第3の女」、本格デビュー第2弾。
1作目“恋し恋しや”[2005年]よりも、こっちがいいな。
アルバムの出来自体は、正直言いまして、そんなに大したものではありません。
いい曲もありますが、インパクトやフックに欠ける、似たような曲が並んでます。
下手すれば、数多ある「癒し系」として消費されてしまいそう。
しかし、最大の魅力は、里アンナの存在そのものであります。
民謡一家に育った彼女の大らかな歌声と、
苦労を重ねてようやくデビューに至った彼女の唄う喜びに溢れた作品であります。
ケレン身なく、無用なフェイクもありませんが、充分にソウルフルです。
そのポテンシャルの高さに、期待を込めて選出っと。
よく聴いたことには、違いありませんしね。

そうそう、実は、2005年は奄美のリリース・ラッシュだったのです。
マリカ・ミズキとして活動している2人は、揃ってソロ作を発表しました。
リーダー格・ミズキこと中村瑞希の“カフ”は、普通の島唄集。
演奏はほぼ三味線一本、とこれまでの作品と曲も被ってるし、
作品の意図が解りません。
一方、マリカこと吉原まりかの“カナ”は、工夫いっぱいの意欲作。
コチラの方が、これまでのマリカ・ミズキ作品に近いかな。
歌唱技術は、ミズキのほうが遙かに優れてますが、
凝ったアレンジや、最後の意味深な隠しトラックなど、
聴くものを飽きさせません。
マリカさん、やるなぁ。 ただの妹分じゃなかったんですね・・・。
もう1人。
待望の復帰、元ちとせのシングル“語り継ぐこと”も挙げておきましょう。
歌は、リハビリ中かな。第2弾“春のかたみ”では、大分復活しています。
この曲には、バンジョーがポコポコといい具合に入ってます。
こんなバンジョー、好きやな〜。

以上が、今年の5枚+αでした。

その他では、今年は米国ロックをよく聴きました。
大大大好きなジャクソン・ブラウンのライヴ・コンピレ“SOLO ACOUSTIC VOL.1”は、
車に常備するほどよく聴きました。
昨年のソロ世界公演を集めたもので、ワタシも4月に大阪で見ました。
色んなことを考えさせられた演奏会でしたが、
ジャクソン自身の素晴らしさには、疑う余地がありません。
彼も、60歳ですか・・・。
大好き系では、エリック・アンダースンの“WAVES”や、
ジョン・ハイアットの“MASTER OF DISASTER”など、充実充実。
まだまだ現役。 頑張ってるなぁ〜〜〜。

米国南部系を2つ。
豪快なスライドを聴かせるソニー・ランドレス“GRANT STREET”は、
3ピース・バンドでのライブで、
これでもかっっと言うくらいギターを聴かされてしまいます。満足です。
サン・ヴォルト“OKEMAH AND THE MELODY OF RIOT”も、
負けないくらい豪快で、荒くれた演奏を聴かせます。
音だけ聴いたら、70年代の演奏だと言われても信じてしまいそうです。
それでも、荒涼とした心情が滲んでるが、「オルタナ」なんでしょうかね。
ともキンのライバル(?)、ストリング・チーズ・インシデントの“ONE STEP CLOSER”も、
ナカナカの好演。
近年のファンキー・フュージョン路線に感じていた危惧を、払拭する出来でした。
開放的な、スケールの大きさが戻ってきたぞ。
システム・オブ・ア・ダウンの2連作“MEZMERIZE”と“HYPNOTIZE”も、楽しみました。
この人ら、面白いな。反ブッシュやし。
ゴリゴリのヘヴィ・ロックですが、たまらんユーモアがありますね。
ボストン・ケルト系パンクのドロップキック・マーフィーズ“WARRIOR'S CODE”も盛り上がりました。
マーフィーズ、猪突猛進しとります。
あと、話題作でありましたライ・クーダーの久々のソロ“CHAVEZ RAVINE”。
これは、正直、あんまり楽しめませんでした。
ラジオなどで偶然聴いたら、ハッとするかも知れませんが、
アルバム1枚、じっくり聴いて、ん〜〜〜、難しい。観念的すぎる。
どう聴いたら、楽しいの?
やっぱり、ワタシにとってライの最高傑作は、“GET RHYTHM”[1987年]なんですね。

米国以外では、こんなん聴きました。
崔健(ツイ・ジェン)の久々の新譜“給イ尓一点顔色”。
ローリング・ストーンズの中国公演で、ミックと一緒に唄ってたぞ。
元気でやってるんやな。 相変わらず、尖ってるな。
ロックで、ハウスで、ラップでもあるんでしょうが、どれでもありません。
演奏も、何かグジャグジャ。
中国では「ロックの父」と呼ばれてますが、
そんな保守的で形式的なイメージとはかけ離れた個性です。
沖縄・超メジャー、キロロの“帰る場所”。
沖縄に、自然体で向き合う姿勢には、共感が持てます。
いつの間にか口ずさんでしまう、親しみやすい驚異のメロディ、恐〜〜〜い。
フランスのヤン・ティエルセン“LES RETROUVAILLES”も、面白かった。
映画“アメリ”の音楽担当の人ですよ。
アコーディオンなどのインスト中心で、軽快なワルツなんぞも織り交ぜて、
濃ゆ〜い演奏を聴かせます。
しかし、こういう音楽、何と呼ぶのでしょう??

うわぁ、メチャクチャに長くなってるなぁ。
2004年発表のCDについても書こうかと思ってましたが、もう止めよ。
2005年は、結構たくさんCDを買ったんですね。

最後に、去年買ったCDで、一番よく聴いた旧作は、
恥ずかしながらニュー・グラス・リヴァイヴァルでした。
“FLY THROUGH THE COUNTRY/WHEN THE STORM IS OVER(2in1)”[1975/76]と、
“BARREN COUNTY”[1979]。
1か月くらいは、車でこればっかり聴いてたかも。盛り上がりました。
ああ、原初体験とは、恐ろしいもんじゃ。
もう一つ。
リチャード・トンプソンのウェブ限定通販CDを4枚買いました。
ライヴ盤ばかりでしたが、やはりどれも素晴らしい。
スタジオ新緑“FRONT PARLOUR BALLADS”[2005年]を含めて、
RTさんもよく聴いた年でした。

2006年も、いっぱいCD聴いてやる。

2006.4.9 text by 7★


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