「里アンナ〜底知れず、奄美」

何人目かの「奄美の歌姫」里アンナ
初めてアンナさんを知ったのは、RIKKIのアルバム“miss you amami”[1998年]。
お囃子で参加してたんで、名前はインプットされておりました。
音源としては、2002年に奄美へ旅行したときに、
“里アンナ傑作選”というカセット(現在は“きょらうた”としてCD化)と、
“大江戸人祭〜東京ラプソディ2000”(アンナ・シュガー名義)を入手しました。
    ・・・他では、お目にかかれませんでした。
“東京〜”は、何とも言いようのないもんですが、
島唄集“〜傑作選”は、冴え渡る伸びやかな高音が印象的。
ポップスのアルバムを、待ちかねておりました。
「島唄ベースの、奄美ポップス」って、そんなに無いもんね。

里アンナさんは、祖父の島唄&三味線名人・恵純雄さんより3歳から手ほどきを受け、
高校時代より鹿児島県や奄美の民謡大会を荒らします。
高校卒業後、ポップス歌手目指して1998年に上京。
以来、ソウル〜ゴスペル歌手「アンナ・シュガー」として、
企画ものシングル“東京〜”や、ワタシの大嫌いな「ソーランよさこい」を唄ったり、
「恵アンナ」と名乗ったりして(活動は不明)、下積み。
7年間の紆余曲折を経まして、2005年、ようやく本格デビュー。
6月“恋し恋しや”、12月“夢何処”のミニ・アルバム2を発表するに至りました。

そんな里アンナさんのデビュー・ライヴ・ツアー(?)が名古屋であるというので、
行って参りました。
・・・大阪公演は、無かったんですよ。
2月19日、会場は「得三」というライヴ・ハウスです。
あらま、ビックリ、超満員。 せ、狭い。
150人くらいは入ってたかな?
ちょっと、チケット売り過ぎちゃうかな?
ドリンクのオーダーも、とってもらえませんでした・・・(;;)

19時。歌姫登場です。
これまで、ワタシの見てきたどの「奄美の歌姫」よりも、大柄です。
(これまでの歌姫が小柄すぎるんですけど・・・。)
外見は、イマドキの人です(かつては、茶髪だったようで)。
演奏は、休憩を挟んでの2部構成で、
前半後半はそれぞれポップス・パートと島唄パートに分かれてまして、
ポップスには、ギターの伴奏が、島唄には三味線がつきます。
演奏曲は、下の通り。
05 と 14 では、アンナさんの朴訥とした三味線も加わりました。

=1st Stage=
[ポップス・パート]
01 恋し恋しや  02 コノソラの先  03 MOON BEACH
04 月の足跡  05 懐かしゃる声
[島唄パート]
06 朝花節  07 行きゅんにゃ加那節  08 ヨイスラ節
09 糸繰り節  10 豊年節
=2nd Stage=
[ポップス・パート]
11 ゆらり小舟で  12 雪の舞  13 まつりの夜
14 あなたしかいなくて  15 童神  16 俊良主節
[島唄パート]
17 請けくま慢女節  18 黒だんど節  19 ワイド節  20 六調
=encore=
21 夢何処
(guitar:永島広、 三味線:松崎博文)

1〜2曲目では、声も出ず、音程も不安定で、
果たしてどうなることかと思いましたが、
徐々に咽も暖まり、前半の島唄パートの頃から声がガンガン出だしまして、
後半ではもう全開。
裏声での倍音もますますビンビン響きます。
アンコール“夢何処”では、高音は熱を孕んで冴え渡り、もう圧巻でした。
近年の女性歌手(希に男性歌手も)にありがちな、
やたら裏声とか、ブレスがハァハァとかのウザいフェイクもなく、
声量を見せつけることもなく、実に素直な歌唱です。
それでいて、充分ソウルフル。

で、比べるな、と言われてもどうしても比べてしまう、奄美の先輩歌姫たち。
ポップスで成功したRIKKI元ちとせの後塵を拝するアンナさん。
高度な技術で、絶妙に抑制された歌声を緻密に積み上げていくRIKKI
振幅の激しい荒削りなコブシで、溢れる情感を劇的に撒き散らす元ちとせ
彼女には、この2人の先達にはない「大らかさ」があります。
MCからも伺い知れる、ほのぼのとした大らかさ。
出身地も、RIKKI元ちとせは山がちな地形の奄美南部・瀬戸内町、
アンナさんはなだらかな北部・笠利町で、
唄のスタイルも両者では違うようです。
ともすれば神秘的でキャラを作りすぎの嫌いもある元ちとせ
(本人さんは、もっとお茶目な人だとお見受けしますが・・・)、
技術の高さ故か、情感に乏しく無機質にも感じられるRIKKIにはない、
自然さ・自由さ、親しみやすさが感じられます。
良く通る声を、のびのびと響かせて、穏やかな情感を歌に込める。
決して「第3の女」でも、「2〜3匹目のドジョウ」でもありません。
「精霊の宿る声」のキャッチ・コピーも不要でしょう。
「癒し系」に閉じこめておくのも、彼女の可能性を狭めるだけに思えます。
もっと、様々なタイプの曲も唄えるし、唄いたいはず。
ライヴで聴かせた未発表曲13は、アップテンポで、いい感じでしたしね。
「こんな手拍子のくる曲が、もっと欲しい」って、御本人も仰ってましたし。

人前で唄うことを、純粋に楽しんでいる様に見えたアンナさん。
大勢詰めかけていた奄美の島ッチュにも、愛されてるようです。
その飾り気のない佇まいは、素顔の奄美そのもの。
その人柄が、唄にも滲み出てます。
彼女の持つキリスト教の信仰も、何か関係があるのでしょうか。
スケールの大きさとポテンシャルの高さを見せ、
今後への期待感とともに初々しいステージは終わりました。

抜群の歌唱技術と、豊かな表現力を持つ奄美の女性歌手。
過剰なあざとい自己顕示が感じられない、歌の力強さが共通の魅力です。
今後の展開が、ますます楽しみです。

夢何処
“夢何処”[2005年]
Pacific Moon(CHCB-10062)

里アンナ公式サイト
   http://www.pacificmoon.com/anna/

スポニチ・アネックス「里アンナの月のカケラ」
http://www.sponichi.co.jp/entertainment/sato/index.html

2006.4.9 text by 7★


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