【こんなCD聴きました・2006年】

(a)“COLORBLIND” ロバート・ランドルフ&ザ・ファミリー・バンド(米国)
(b)“SACRED” ロス・ロンリー・ボーイズ(米国)
(c)“BAR 17” トレイ・アナスタシオ(米国)
(d)“ΒΥΣΣΙΝΟ & ΝΕΡΑΝΤΨ(SOUR CHERRY & BITTER ORANGE)” ハリス・アレクシーウ(ギリシア)
(e)“NIGER” アフェル・ボコーム&アルキバール(マリ)=写真

NIGER

(a)は、米国南部の黒いペダル・スティール奏者の3作目。
もとはゴスペルをやってましたが、もうノリはハードロックです。
このアルバムは、ヴァラエティに富んだ曲作りとアレンジで、ポップな印象です。
ゲストには、エリック“神様”クラプトンもDで参加してますが、影薄いぞ。
かのデビュー・ライヴ・アルバムの「衝撃」を求める向きには物足りないかも知れませんが、懐の深い、足腰の強さを感じさせます。
このくらいの密度の楽曲を、ライヴで聴いたらもっと凄いことになるに違いない。
ああ、再来日熱望。

(b)は、初めて聴いたチカーノ系野郎3人ロックバンドのスタジオ2作目(たぶん)。
バンド名、最悪です。
テキサスです。
兄弟バンドです。
汗臭いです。
しかし、力強い演奏と、ラテン風味の泣きの入ったメロディは、なかなかいけます。
ホーンやオルガンも織り交ぜ、ヴァラエティに富んだところも見せます。
力業のロス・ロボス、って感じかな?
それに、レイボーンやZZトップが入ってるかも。
ライヴ見たい。 ・・・・けど、想像通りのライヴなんやろな。

(c)は、元フィッシュのギタリストの、7枚目?
演奏はフィッシュの延長上のものですが、より自由でスリル満点。
ストリングスやホーンもふんだんに盛り込んでるんですが、決して厚化粧にはならず、軽快さを残します。
もちろん、豪快なギターソロもたっぷり。
音がいいので、何かよく聴いてしまいまいた。
ドライヴにも、合いますよ〜。

(d)はおなじみ、ギリシアの国民的女性歌手。
ハリスは、わりと追っかけて聴いていますが、これは近年のベストでしょうね。
ギリシア周辺の民族楽器を多用し、繊細なメロディを正確な節回しで唄います。
絃とブラスの響きも、心地いい。
淡々とした歌唱と演奏ですが、意欲と自信に満ちてます。
70年代の録音かと思わせるような渋い曲と、現代的でダイナミックな曲がバランス良く配されてます。
音色が柔らかいのは、アナログ録音やからかな?
付属のブックレットが、ほとんどギリシア語なんで、本作についての詳しい情報は何もありませんが、相当気合いの入った作品であることには違いない。
ハリス自らのプロデュースですし。
バルカン半島全体を見渡してるような印象を受けます。

(e)は、故アリ・ファルカ・トゥーレの直弟子で片腕だった歌手兼ギタリストとそのバンド。
もちろん、アリ・ファルカ直系の、マリの伝統に基づいた土臭い演奏ですが、アレンジが綿密で、緊張感があります。
スケールの大きな、ダイナミックな演奏です。
ンジャルカ(njarka=1絃フィドル)やンジュルカ(njurka=1絃リュート)を効果的に使い、1曲の間にテンポを上げたり、リズムを変えたりと、聴きようによっては、「プログレ」ですわ。
歌詞も、アリ・ファルカ流に、マリの人々の歴史や暮らしに関した内容。
このアルバムは、アフェルの2枚目ですが、早くも円熟の境地です。
2005年砂漠フェスでの演奏も、抜群にカッコ良かったし。
来日公演、熱望します。

アリ・ファルカのもう一人の後継者、ヴィユー・ファルカ・トゥーレの デビュー盤"VIEUX FARKA TOURE"もよかったですよ。
アリ・ファルカの息子でギタリストですが、こちらは若者らしい、溌剌とした演奏です。
マリの伝統的なバンド編成ですが、レゲエもやっちゃったりして。
今後に期待を持たせます。

そして、御本尊・アリ・ファルカ・トゥーレのおそらくラスト・アルバムとなるであろう“SAVANE”。
その死が突然だったことを示すような意欲作。
自信に満ちた、円熟の演奏ですが、「枯れ」とか「渋さ」とかとは無縁です。
脂ぎった重厚な演奏で、これまで以上にファンキーな曲もあるぞ。
返す返す、その死が惜しまれます。

その他,2006年ものを。

アフリカものでは、在仏マグレヴ系バンドのグナーワ・ディフージョンの“FUCKING COWBOYS”。
タイトル、最高!
モロッコを中心とした北西アフリカ地域の、ベルベル人系の伝統音楽グナーワを、レゲエやロックと混ぜてポップに演奏するバンドです。
お察しの通り、社会派です。
パリでのライヴを、オマケのDVD付きで収録しています。
リラックスし、且つ熱い演奏で、聴衆の反応も滅茶苦茶エエ。
フランスでの、マグレヴ系住人の代弁者なのね。
ところで、このDVDのほうが曲数が多いのは、何ででしょう?
DVDは、まだ見てません・・・。
このバンドは、このライヴ・アルバムを最後に、解散するようです。
勿体ないな。

マンドリンのカリスマ、サム・ブッシュ(米国)の“LAPS IN SEVEN”も、愛聴しました。
サム・ブッシュを聴くと、マンドリンを弾く気が沸々と湧いてきます。
(えっ、もっと聴くべき?)
このアルバムは、ワタシの知ってる曲がいっぱい演奏してくれているので、楽しく聴けます。
ニワちゃんPCの壁紙を飾る天才・ジョン・ハートフォードのC、
作者本人も参加したバディ・ミラーの@やジャン・リュク・ポンティのGの2曲、
70年代ヴァイオリン・ロックのイッツ・ア・ビューティフル・デイJ、などなど。
これまでのアルバムでもそうですけど、あのサム・ブッシュが自分と同じ音楽家の同じ作品を聴いてきたんやと思うと、ちょっと嬉しいですな。
でも、サムさん、基本的にアレンジそのままやるんやね・・・。
いやいや、その実直さが魅力でもあるんですよね。

「あの人の弟」クリス・ジャガー(英国)の久々の新作“ACT OF FAITH”も、楽しい作品でした。
いつもの、軽〜いケイジャン・ザディコ・マナーの演奏に、ブリティッシュ・トラッド風味を効かせてのパブ・ロック。
高度に洗練された、芳醇な音楽です。
混合音楽の、理想型ですな〜。
もちろん、あの「転石兄貴」も参加。
楽しそうに、音楽やってはるわ。

オホス・デ・ブルーホ(スペイン)の“TECHARI”も、充実。
自信に満ちた勢いのある演奏です。
今が旬。
アレンジの綿密さに、舌を巻きます。
音楽性の幅も広く、聴いてると世界旅行をしてる感じ。
でも、ありがちなギクシャク感や無理矢理感とかは、皆無。
これまた、高度な混合音楽です。
雑食した音楽が血肉化してるのね。
ライヴが楽しそうです。

あと、沖縄〜奄美ものをまとめて。
里アンナ(奄美)の“水無月”、瑞々しい歌声は冴えますが、そろそろ渾身のフル・アルバムを!
元ちとせの“ハナダイロ”ですが、問題作です。
歌い回しが、奇妙です。
ライヴでも、声の出や音程が厳しかったし。
リハビリ途上ですか・・・。 残念。
迷いを吹っ切って、またあの奔放な歌声を聴かせて欲しいな。
桑江知子“カジマヤー(風車)”は、充実作。
前作の方が聴き応えはありますが、このアルバムは自作曲がいいです。
今後も期待できますよ〜。
恥ずかしながら、“キロロのいちばんイイ歌あつめました”も愛聴してしまいました。
キロロ、エエで。

ブラジルの歌姫、マリーザ・モンチの意欲的な2作同時発売の、
“INFINITO PARTICULAR(私の中の無限)”“UNIVERSO AO MEU REDOR(私のまわりの宇宙)”も、気持ちよく聴きました。
上品な音楽ね〜。音も良いし。
ブックレットに、ギターのコードがついてるのが、また良い。

最後に、日本ブルーグラス界から羽ばたくこのお二人。
エレキ・ベースとマンドリンのデュオ・「ふたり乗り」のデビュー作“FUTARINORI”。
無限の可能性を秘めてます。
みんな、応援してね〜。聴いてね〜。
・・・・バンド名は、道交法違反やけど。
2007年には2作目が出ましたが、「ライヴ会場で買おう」としてるうちに、買い損ねております。
ライヴ、いつか行くよ〜。
もっと、売れろ〜〜〜!

ふたり乗りHP
↓↓↓
http://www.joyhum.com/futarinori

2008.3.8 text by 7★

【こんなCD聴きました・2007年】
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